薬剤師の転職、年収よりも大事にしたこと。納得して働ける職場を選んだ話

目次

1. 転職で一番大切にしたのは「安心して働ける環境」だった

転職で一番大事にするべきなのは、年収でしょうか?
私の場合、そうではありませんでした。

安全対策がきちんとされていること
調剤過誤やインシデントに対するルールが整っていること
・働く側が安心して過ごせる環境であること

それが、私にとって何より大事な条件でした。

実際、ある職場で「ルールがない怖さ」に直面したことがあります。
そこでは、ミスをしても「なかったことにする」空気があり、
誰かを責めて終わりにするような場面もありました。

そんな経験から、次に選んだ職場では、
調剤過誤への対策が会社全体で徹底されていることや、
薬歴の電子化など、現場の仕組みに納得感が持てるかを重視しました。

結果的に、私がその職場で働いたのは10年。
人生でいちばん長く、安心して働けた場所になりました。

今回は、そんな私が“納得して働ける職場”に出会うまでの話をお届けします。


2. 病院勤務で感じた“ルールのなさ”と違和感

2-1. インシデントをなかったことにする空気

私がとある120床の小規模病院に転職したのは、30代半ばごろ。
新卒から長く調剤薬局で働いてきた私にとって、
「病院の現場も経験してみたい」という気持ちが少しだけあった時期でした。

でも実際に働き始めてすぐ、私は違和感を覚えるようになりました。
調剤過誤やインシデントに対する明確なルールがない

たとえば、規格違いの医薬品を調剤してしまっても、
そのまま主治医にかけ合って、なかったことにするケースがある。
ミスをしたスタッフを責めるだけで、再発防止の話にはならない。

2-2. 調剤薬局での経験が“常識”ではなかった

今まで働いてきた薬局なら、インシデントレポートを書いて、
どうして起きたのか、再発しないようにどうすべきかを
大なり小なり話し合ってきたのに、私の中では「当たり前」だったことが、
そこでは通用しませんでした。

薬局長の価値観と合わない部分も多く、職場の雰囲気は正直ピリついていました。
残業も増え、心身ともに余裕がなくなっていきました。
「ああ、ここに長くいるのは無理かもしれない」
そう感じたときには、もう次の転職を考えていました。


3. 過誤対策が整った薬局を転職先に選んだ理由

3-1. エージェントに最初に伝えた条件

病院を退職したあとの転職では、
“安全対策がきちんとしているか”を最優先で考えました。

特に重視したのは、調剤過誤を未然に防ぐための仕組みがあるかどうか。
過去の職場では、確認作業が形だけになっていたり、
ヒヤリ・ハットを共有する文化がなかったりするところもありました。

だから私は、エージェントの方に最初にこう伝えました。

「調剤過誤の対策について、会社全体で取り組んでいる薬局を紹介してほしい」

一見すると、
「インシデントや過誤対策なんて、どこの薬局でもやってるでしょ?」
と思われるかもしれません。

でも、それは実はぜんぜん違う——と、私は感じています。

私自身、いくつもの薬局を経験するなかで、
「ああ、こういう対策がある薬局って、実は貴重だったんだな」と感じることが多くありました。

3-2. 具体的に導入されていた対策と安心感

私が転職を決めた、20数店舗を展開していた薬局では、 ユヤマのポリムスやクカメディカルのミスゼロ子といったピッキング監査システム端末、そして散薬監査システムが全店舗に導入されており、 過誤発生時の報告体制も明確でした。

すべての過誤は当日中に社長まで共有される仕組みがあり、
属人的な対応ではなく、会社として再発防止に取り組む姿勢が感じられました

薬歴も他の薬局より早い段階で電子化されており、
現場の業務効率化や確認作業の明確化が進んでいたことも、
安心して働ける要素のひとつでした。

3-3. あとから気づいた「本当のすごさ」

この職場で働いた経験の“本当のすごさ”に気づいたのは、退職後に転職した小規模や個人薬局での経験を通じて、あらためて実感したからでした。

すべての薬局が、過誤対策を当たり前のように整えているわけではない。
むしろ、そこまで徹底している薬局はごく一部なのだと、転職を重ねて実感しました。

大手薬局ではコンプライアンス意識が高く、
機器投資やルール整備も一定レベルで行われている印象があります。

でも中小や個人薬局の場合、
そうした対策にどれだけ力を入れるかは、経営者の方針や会社の資金状況によって大きく差が出ます。
資金に余裕がない薬局では、どうしても安全対策に必要な設備投資が後回しにされがちです。
結果として、現場の確認体制や再発防止の仕組みにもばらつきが出やすくなります。

過誤対策がきちんとされているかどうかは、
派手さはないけれど、薬局運営の誠実さをはかる基準のひとつになる
——
今はそう感じています。


4. 納得して働ける場所を見つけた、私の選び方

4-1. 年収では得られない価値もある

年収が大きく上がったわけではありません。
でも、「安心して働ける」という感覚は、数字では測れない大きな価値だと実感しました。

その職場はM&Aで体制が大きく変わり、最終的には退職することになりましたが、約10年間働いたなかで、「ここにしてよかった」と心から思える日々でした。

4-2. 経営方針によって差が出る“安全対策”

過誤対策やインシデント対応は、会社の姿勢や経営者の意識によって大きく変わります。

私が安心して働けた職場では、現場の仕組み・ルールづくりが徹底されていたことが何よりの違いでした。

4-3. 自分の軸があるからこそ、納得できた

転職に正解はありません。
でも、「自分は何を大切にしたいか」という軸を持つことで、
“納得して働ける場所”に出会える可能性は、きっと高まります

職場選びで何を重視するかは、人それぞれです。年収を重視する方もいれば、人間関係や通勤時間、残業の少なさを大事にする方もいると思います。

この記事は、あくまで私が「これだけは譲れない」と思った軸で選んだ転職の一例です。
すべての方に当てはまるわけではありませんが、
どこかに「それ、わかる」と思える部分があればうれしいです。

これから転職を考えている方の参考になれば、幸いです。

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転職市場の現実と、そこに立ち向かう視点をまとめています。

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